前回に引き続き、注音を学習するとどのようなメリットがあるかをお話していきたいと思います。
zi ci si と zhi chi shi
ピンインで学習していた時に、なんでこの2グループは母音がどちらも[i]なのに、実際に発音してみると前者は「ズー、ツー、スー」、後者は「ヂー、チー、シー」的な発音なのだろうとずっと疑問に思っていました。「zhi chi shi」は良いとしても、「zi ci si」に関しては全く[i]の要素無いやんけ!と。
ですが、注音を学習してみて謎が解けました。注音で見てみましょう。
zi=ㄗ ci=ㄘ si =ㄙ zhi=ㄓ chi=ㄔ shi=ㄕ
どちらも子音だけの発音であり、本来であれば恐らく
z c s zh ch sh
と表記されてもいいところですが、ほかの発音の表記と揃えるためなのか、便宜的に[i]が付されているのですね。
ちなみに「喜 xi3」、「地 di4」などの注音表記を見てみると、
xi=ㄒㄧˇ di=ㄉㄧˋ
となっており、zi ci si とは異なり、しっかりと[i=ㄧ]の母音の発音が含まれていることが見て取れますね。
他にもある、ピンインの母音表記に惑わされやすいパターン
zi ci si 、zhi chi shiが実は子音だけで、後ろについている[i]は便宜的についているから無視してもオーケー、なのですが、ついでに紛らわしいパターンも紹介してみたいと思います。
中国語の発音を習うときにその発音の基本形として
be pe me fe de te ne le ge ke he ……
といった表記で習った方が多いのではないでしょうか? しかし、実際にはこのうち
be pe fe
の3つに関しては、発音に当てはまる漢字は現状存在しません。子音だけで発音したときの音(b p f)に一番近いものが[e]を加えたbe pe fe だったのだと思われます。
これも注音で学習するときにはすべて子音だけの状態
ㄅ b | ㄆ p | ㄇ m | ㄈ f | ㄉ d | ㄊ t | ㄋ n | ㄌ l | ㄍ g | ㄎ k | ㄏ h |
となるため、いちいち「この発音ってあるんだっけ」と悩むのが少なくなりそうです。
未だに難しい si se su
「四」「色」「素」この発音をきれいに区別してできていますか?私はいまだに「四」すなわち[si]の発音が苦手でできていません。
というのも、注音を見てみれば
si=ㄙ se=ㄙㄜ su=ㄙㄨ
となっており、siは[ㄙ]の子音だけで後ろに余計な音を足してはいけないのです。少し口の開きがあいまいだと[se=ㄙㄜ]に、日本語の「ス」のように発音してしまうと「ウ」の音が強すぎて[su=ㄙㄨ]に聞こえてしまうみたいなのです。
このように、注音で発音を見ていくと、子音だけの発音の難しさに気づかされたりします。だからこそ、母音と子音に意識をもって発音するようになり、結果的に上達していくのではないかと思います。
ü は ユ じゃない!!
[ü]の発音って最初からできましたか?私は中国語を学び始めてから半年近く、台湾人に「なんか違うんだよな~」と言われ続けてきました。なんなら韓国人の友達にも馬鹿にされるくらい…
日本語の「ユ」と同じだと思って発音している方が大多数だと思います。自分もそうでした。「月」は「ユエ」だし、「去」は「チュー」といった感じに。
未だに100%の正解に辿り着けている自身はありませんが、自分なりに[ü]の発音の仕方を本やネットで探しては試して、を繰り返した結果、一番しっくり来たのは
「ウ」の口の形で「イ」と発音する
というものでした。ネットでは細かく口の大きさや力の入れ具合なんかを説明していたりしますが、コレを意識して発音してみるだけで「ユ」とは全く別物なのだと理解できると思います。それができたら後は口の形や力加減なんかはネイティブの発音を聞いて微調整していけばそれなりに近づけるのではないでしょうか。
話がピンインから逸れました、、、実はこんな風に日本語の発音と混同してしまう原因って、ピンインで書くと[yue]、[qu]って表記になるのが大きいのかな、と思います。
ピンインの表記に「yu」だったり「u」が含まれていると、どうしても「ウ」の発音を意識してしまうのかな、と。
そこで私は注音で覚えることにして、[ü]すなわち[ㄩ]の発音を
ㄩ = 「ウ」の口の形で「イ」の音
とインプットするようにしました。ここで前回話した「全く知らない文字(注音)に全く知らない発音をリンクさせる」ことのメリットがあるのだと実感しました。
音節表を全部覚えようとしていませんか?
たまに見かけるのが、中国語の発音で存在する組み合わせをすべて覚えようとしている人。中国語の発音の組み合わせは単純に数えて405個もあるそうです。 be pe feのように実際には使わない組み合わせを除いても、日本語の発音(濁音なども含めて約120音)に比べてその多さは圧倒的であることが容易に想像できます。それをすべて覚えようとするのは効率が悪いでしょう。
注音で勉強するようになってから、自然と「この組み合わせはあるんだっけ」「この発音はどうやって書くんだっけ」なんてことがグンと減りました。
例えば「照」は zhao?zhiao? 「叫」は jao? jiao?
どっちも頭の中では「ジャオ」って呼んでるけど違いもわからない・・・
とずっと思っていました。
では注音で見てみるとどんな風になるでしょうか。
照 ㄓㄠˋ 叫 ㄐㄧㄠˋ
こうやって見ると、「照」は[ㄓ:zhi]と[ㄠ:ao]の2つの組み合わせ、「叫」は[ㄐ:ji][ㄧ:i][ㄠ:ao]の3つの音が組み合わさってできているんだな、と視覚的に捉えることができます。つまり、ピンインで書くとしたら前者はzhao(もともとzhiのiは便宜的についているだけだから消える)、後者はjiaoとなるはずだな、とピンインでの理解も深まりました。
これが慣れてくると注音を見て「[ㄓ]と[ㄧ]の注音符号同士はくっつかないよな」なんて風に見ただけでどんな組み合わせが存在するのかをぱっと判断できたりもします。パズルみたいでけっこう面白いですよ。
注音をどうやって覚える??
そうはいっても、注音は覚えて使えるようになるのは漢字を何千字も覚えている日本人でも一苦労です。カタカナっぽい見た目をしているけど全然違うし、なんといっても意味を持たずにただ音だけを表す文字をイチから覚えるなんてほとんどの人にとって小学校1年生以来ではないでしょうか?もしかしたら韓国語などの他言語の表音文字を学習したことがある人にとっては簡単かもしれません。
実際に私が注音を覚えたときにやった方法として一番有効だったのは、スマホのキーボードに「繁體注音」のキーボードを導入することです。私はiPhoneユーザーなので、
設定 → 一般 → キーボード → 新しいキーボードを追加 → 繁体中国語-注音
で追加しました。Androidユーザーの方はGoogle Playから「Google Zhuyin Input」というアプリをインストールすればよいみたいですね。
最初のうちは全然わからないし、LINEとか早く返事したいのにめちゃくちゃ時間かかるしでイライラしていましたが何回も注音に触れていくしかありません。それに、スマホのキーボードのいいところはどれがどの発音かわからなくてもとりあえず正解はキーボードの中にある、ということです。
手書きで注音を練習するのももちろん大事ですが、そもそも注音の文字がどんな形だったかも思い出せないのが学習初期の悩みでした。その点、時間はかかりますがどれかを押したらいつかは正解に辿り着くというのはキーボードを使うメリットでしょう。
ちなみに以前はパソコンのキーボードにも透明なマスキングテープを貼ってその上に注音を書く、なんてこともしていましたがテープが剥がれたり、何回もタイプしているうちに文字が消えてきて指がインクで真っ黒になったりしました。専用のシールやステッカーなんかも売っているみたいなのでそちらを利用してみてもいいかもしれません。

[送料無料]外国語の学習に最適日本語キーボードに貼るキーボードレイアウトシール(韓国語 ハングル/ロシア語/タイ語/中国語 台湾 繁体 注音ボポモフォ 繁體字/スペイン語/ドイツ語 独語/タイ語/フランス語 仏語/アラビア語 亜語/ヘブライ語 ヘブル語/ポルトガル語/日本語)
あとは、言語交換を台湾人とするのもとてもおすすめです。前回も触れましたが、台湾人はピンインがわからない人が多いので、自ずと注音を覚えなければいけなくなります。今はオンラインでも台湾人と言語交換が気軽にできるので言語交換を利用して自分を追い込むというのもおすすめです。
まとめ
普段頭の中で思っていることをとりあえず文章にしてみようと思い書き始めたので脱線だったり説明がぐちゃぐちゃだったり論理的に齟齬があったりすると思います。そこらへんは今後修正を加えていけたらなと思っています。
実際注音を勉強して台湾人や中国人のように発音できるようになったのか?と言われたらまだまだですし、そもそも中国語自体へたくそですが、少なくともピンインで習っていた時のなんとなく受け身で学習して雰囲気で発音していたころよりは、自分で中国語の発音の仕組みを勉強してうまくなっていると思います。
中国語が全く分からない状態で初めて台湾に来た時に衝撃だったのが、台湾人が何を話しているか1ミリもわからなかったということ。英語であれば「car」だったり「music」だったりなにかしら単語を聞き取れる素養は日本人誰しも持っていますし、中国語も文字で「車」「音樂」と見ればすぐに理解できます。しかし、全く初めての言語を耳で聞いただけでは何一つわからないんだということを痛感しました。
だからこそ、台湾で中国語を学ぶ以上なるべく台湾人が学習してきたプロセスに近い形で学習していくのが上達のカギだと思い、注音を真剣に覚えようとすることができました。
長々と書きましたが、このブログを読んで少しでも注音に興味を持って、何かのきっかけになってくれればうれしいです。また次回以降に自分が今まで考えて実践してきたことを書いていければなと思います。
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apu
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